第3部 申告書の読み方・書き方
論点3J 総合演習――有税Xと無税Xを同時に立てる
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
判断課題
少額貨物に有税品と無税品が混在するとき、5欄をどう配分するか。
なぜこの演習が要るか
論点3Fで有税・無税の分け方そのものは扱った。しかし第54回から第59回までの公式問題では、輸入申告の少額合算は6回とも片側に寄っており、有税Xと無税Xが同じ問題で同時に立った実績はない。指示文だけは6回とも「有税である品目と無税である品目に分けて、それぞれを一括して一欄にとりまとめる」と一貫して置かれているため、出題側はいつでもこの形を投げられる状態にある。ここでは、その未出パターンを分類・換算・加算からひととおり通す。
設定(別冊に代えて、本問に必要な税率と相場を示す。税率は本演習用に置いた値であり、実務・本試験では必ず適用時点の実行関税率表を引くこと)
輸入者はA社。中国から6品目をCIF建て・米ドルで輸入する。適用為替相場は1米ドル=150.00円。仕入書価格のほかに、買手が売手のために支払った仲介手数料 600米ドルがあり、仕入書価格に応じて按分して加算する(仕入書合計 20,000米ドルに対し 3.0%)。ほかに加算・不算入の要素はない。
| # | 品目 | 品目番号 | 適用税率 | CIF(米ドル) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 竹製フルーツバスケット(組物) | 4602.11-9001 | 無税 | 9,000 |
| 2 | 竹製スプーン | 4419.19-0005 | 3.9% | 4,200 |
| 3 | 木製まな板 | 4419.90-0003 | 無税 | 3,900 |
| 4 | ガラス製鏡(竹枠付き) | 7009.92-0006 | 無税 | 1,100 |
| 5 | やし繊維製キッチンブラシ | 9603.90-0006 | 5.8% | 1,000 |
| 6 | 竹製ほうきの柄 | 4417.00-0201 | 3.4% | 800 |
| 合計 | 20,000 |
ドリル
第1欄から第5欄までの品目番号(10桁)と課税価格を答えよ。少額合算の指示は論点3Fの原則どおりとする。
解答
まず全6品目の課税価格を確定する。CIF価格に仲介手数料を3.0%按分加算し、150円で換算する。
| # | 品目 | CIF | ×1.03 | 課税価格(円) | 20万円以下 | 有税/無税 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 竹製フルーツバスケット | 9,000 | 9,270.0 | 1,390,500 | — | 無税 |
| 2 | 竹製スプーン | 4,200 | 4,326.0 | 648,900 | — | 3.9% |
| 3 | 木製まな板 | 3,900 | 4,017.0 | 602,550 | — | 無税 |
| 4 | ガラス製鏡 | 1,100 | 1,133.0 | 169,950 | ○ | 無税 |
| 5 | キッチンブラシ | 1,000 | 1,030.0 | 154,500 | ○ | 5.8% |
| 6 | 竹製ほうきの柄 | 800 | 824.0 | 123,600 | ○ | 3.4% |
少額貨物は #4・#5・#6 の3品目。これを有税と無税に割る。
- 無税側は #4 のみ。合算する相手がいないので一欄一品目となり、10桁目は
XではなくE。番号は7009.92-000E、課税価格 169,950円。 - 有税側は #5(5.8%)と #6(3.4%)。一括して一欄にまとめ、代表番号は税率が最も高い #5 の
9603.90-0006→9603.90-000X。課税価格は 154,500 + 123,600 = 278,100円。
欄順は合算後の課税価格の大きい順に並べる。
| 欄 | 品目番号 | 課税価格(円) | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 第1欄 | 4602.11-9001 | 1,390,500 | #1 |
| 第2欄 | 4419.19-0005 | 648,900 | #2 |
| 第3欄 | 4419.90-0003 | 602,550 | #3 |
| 第4欄 | 9603.90-000X | 278,100 | #5+#6(有税合算) |
| 第5欄 | 7009.92-000E | 169,950 | #4(単独少額・無税) |
結論を分ける事実
有税・無税に割った結果、片側が1品目だけになることがある。そのときはその欄は合算欄ではないので X を付けてはならず、E になる。「少額が3つあるから合算欄は1つ」と考えると、9603.90-000X に鏡まで巻き込んで1欄にしてしまい、欄が4つしか埋まらない。
有税側の代表番号を価格で選んでいないことにも注意する。#5(154,500円・5.8%)と #6(123,600円・3.4%)は価格順と税率順がたまたま一致しているが、これが逆転する設定は容易に作れる。税率を先に見る手順を体に入れておく。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 少額3品目をまとめて一欄にし、
Xを1つだけ立てる誤り。有税・無税をまたいで合算はできない。 - 無税側が1品目のときに
Xを付ける誤り。合算していない欄はE。 - 少額判定を仕入書のCIF価格のままで行う誤り。加算要素を織り込んだ課税価格で判定する。本問では加算前後で結論は変わらないが、加算により20万円を超える設計は頻出。
- 合算欄を機械的に最終欄へ置く誤り。順位は合算後の価格で決まる。本問では有税合算欄(278,100円)が単独少額欄(169,950円)より上に来る。
ここまでの確認
- 少額貨物を拾ったら、まず有税/無税で2つの箱に割る。箱ごとに合算欄を作るか、1品目なら
Eにする。 - 有税箱の代表番号は税率最大(同率なら価格最大)、無税箱の代表番号は価格最大。
- 箱が2つとも複数品目なら、少額だけで2欄を消費する。残り3欄に高額品を並べることになるので、欄の枠を先に見積もる。