3科目ガイド 02
第1章 通関士試験を仕事の流れで見る
1-1 輸入取引の全体像
例として、日本の商社が外国のメーカーから機械を購入する場面を考える。
- 売買契約で品名、数量、価格、引渡条件を決める。
- 船積書類、仕入書、包装明細書等が作られる。
- 貨物が本邦へ到着し、原則として保税地域へ搬入される。
- 貨物の性状・用途等から関税率表上の所属を決める。
- 現実支払価格と加算要素から課税価格を計算する。
- 原産地と必要書類を確認し、適用税率を決める。
- 輸入申告と納税申告を行い、必要な審査・検査を受ける。
- 関税等を納付し、輸入の許可を受ける。
- 国内へ引き取り、帳簿・契約書・送金資料等を保存する。
試験問題は、この一つの取引を三つの角度から切り取る。
| 科目 | 同じ取引を見る角度 | 典型的な問い |
|---|---|---|
| 通関業法 | 誰が、他人の依頼を受けて税関手続を扱うか | 申告書作成、通関士の審査、通関業者の義務 |
| 関税法等 | 貨物を、いつ、どの法的状態で扱うか | 保税、申告、課税、許可、徴収 |
| 通関実務 | 知識をどう答案へ変換するか | 分類、課税価格、税率、申告欄 |
取引は一つ、試験のレンズは三つ。
1-2 輸出は「税額ゼロの輸入」ではない
輸出は「税額ゼロの輸入」ではない。価格の作り方から別に考える。
| 観点 | 輸出 | 輸入 |
|---|---|---|
| 共通する作業 | 申告、他法令確認、品目分類、統計品目番号、保税地域との関係 | 同左 |
| 申告価格の基本 | 原則FOB価格 | 関税評価により求める課税価格 |
| 運賃・保険料 | FOBへ整えるため設問条件に従う | 原則として輸入港までの運賃・保険料等を含める |
| 税の処理 | 輸入関税の計算はない | 関税・内国消費税等の計算と納付が中心 |
輸入の課税価格は、インコタームズのCIF価格そのものを法的定義とするわけではない。価格条件をそのまま転記せず、問題文に示された費用を判定して申告価格へ変換する。
1-3 実務経験を試験知識に変換する
実務では、NACCSや社内マスタが判断を補助する。しかし試験では、その結果に至る法的理由を選ばせる。経験者ほど次の置換を意識する。
| 実務での見え方 | 試験で問われる言葉 |
|---|---|
| インボイスの金額 | 現実支払価格と一致するか |
| Freight / Insurance | 輸入港までの運賃・保険料等か |
| Agent fee | 実際の役割は買付代理か、販売代理・仲介か |
| License fee | 輸入貨物に係り、輸入取引をするための支払か |
| HS code | 通則、部注・類注、項・号の文言による所属 |
| マスタの税率 | 基本・暫定・協定・特恵・EPAの適用要件を満たすか |
| Customs clearance | 関税法上の申告・許可と、通関業法上の通関業務 |
この章の振り返り
- 三科目は、同じ輸出入取引を「事業者」「法制度」「答案作成」の三方向から見る。
- 実務上の名称ではなく、誰のための支払か、いつ何のために生じたかを法令要件へ翻訳する。
- 輸出と輸入では申告価格の考え方が異なる。
一次資料
- 税関「輸出入通関手続きの便利な制度」:https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/ (2026年8月18日参照)
- 税関「輸入(納税)申告書の記載方法について」:https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1110_jr_20251012ver.html (2026年8月18日参照)
- e-Gov法令検索「関税法」:https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000061?occasion_date=20260701 (2026年8月18日参照)