第1部 現実支払価格と課税価格
論点1K ロイヤルティ等――二つの要件を別々に問う
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
判断課題
輸入品に関係する商標・特許のロイヤルティその他のライセンス料(以下「ロイヤルティ等」)は、必ず加算するか。
原則
ロイヤルティ等は、次の両方を満たし、現実支払価格に含まれていない限度で加算する。
- 輸入貨物に係ること。
- 取引の状況その他の事情からみて、その輸入貨物の輸入取引をするために買手が直接又は間接に支払うこと。
二要件は AND。片方だけでは加算しない。
支払先が売手でなく第三者でも加算され得る。第2要件は、契約と取引実態から、その輸入貨物の輸入取引をするための支払かを判定する。不払なら売手から購入できないことは重要な証拠になり得るが、それ自体を独立した法定要件として覚えない。
課税価格に算入する事例 [加算] |
課税価格に算入しない事例 [別2] |
|---|---|
| 売手の親会社である商標権者へ、輸入品に付された商標の使用料を支払わなければ売手から購入できない。 | 売手・ライセンサー間に支配・下請等の関係がなく、供給元を自由に選べ、ライセンス料不払でも当該売手から購入できる。 |
| 売手自身へ、輸入された特許製品1個ごとの特許料を売買条件として支払う。 | 輸入した機械と同じ機械を本邦で製造する複製権だけの対価。 |
| 輸入DVDに記録された著作物の対価を、売買契約上、権利者へ支払う。 | 輸入後の国内広告で写真を使用する権利の対価で、輸入貨物にも輸入取引にも係らない。 |
結論を分ける事実
- 権利の対象は、輸入品そのもの・その構成・その製造方法か。
- 不払なら売手が販売しない、権利者が供給を止められる等の契約・実態があるか。
- 権利者と売手の特殊関係、下請関係、承認権はあるか。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 「商標が付いていれば第2要件まで満たす」という思い込み。
- 「第三者への支払なら非加算」という思い込み。
- 売上高の一定率で支払うことだけを理由に、ロイヤルティと売手帰属収益を混同する誤り。両者は別の加算類型である。
- 本邦で販売する権利と、本邦で複製する権利を混同する誤り。
ミニドリル
A:輸入靴に付された商標の権利者は売手の親会社で、ライセンス料を払わなければ親会社が売手への供給許可を撤回できる。B:同じ商標の権利者と売手は無関係で、買手は売手を自由に選べ、売買契約もライセンスに言及しない。どちらを加算するか。
解答
Aは、輸入貨物に係り、その輸入貨物の輸入取引をするための支払と認められるため、現実支払価格に含まれていない額を加算する [加算]。Bは提示事実だけなら第2要件を欠き、法定加算要素に該当しない [別2]。実際の問題では契約だけでなく取引実態も確認する。
記録媒体(キャリアメディア)の特例
ソフトウェアなら媒体の価格だけ。ただし映画・音楽は「ソフトウェア」ではない。
データ処理機器に使用されるソフトウェアを記録した磁気テープ・ディスク・カード等(キャリアメディア)は、ソフトウェアの価格が媒体の価格と区別されている場合、課税価格は媒体の価格(媒体自体の価格と、ソフトウェアを記録するための費用を含む)とする。
ここでいう「ソフトウェア」は、データ処理機器の運用に関係する計算機プログラム、手順、規則、データに限られ、サウンド、シネマチック、ビデオ・レコーディングを含まない。したがって映画を記録したDVDや音楽CDにはこの特例は及ばず、記録された内容の価格を含めた全体が課税価格になる。集積回路・半導体等に記録されている場合も対象外である。