第1部 現実支払価格と課税価格

論点1N 取引価格方式を使えないときの順序

判断課題

無償見本、委託販売品、特殊関係で価格影響がある貨物の課税価格は、任意に見積もってよいか。

原則

取引価格が使えなくても、自由見積りには進まない。法定順序で進む。

取引価格方式 ×
    ↓
同種貨物 → 類似貨物 → 逆算方式 → 積算方式 → 特殊な方法
                         └────────┘
                      申出により順序交換可

逆算方式と積算方式は、輸入者が希望する旨を税関長に申し出たときに限り、順序を入れ替えられる。

方法 使う価格・原価 主な条件・調整
同種・類似貨物 現に取引価格方式で課税価格とされた貨物の取引価格 本邦への輸出日が同日又は近接日で、同じ生産国。取引段階・数量、運賃等の差異を資料に基づき調整する。
逆算方式 特殊関係のない国内買手への国内販売価格 通常の手数料又は利潤・一般経費、輸入港到着後の国内運送関連費用、本邦の関税その他の公課を控除する。
積算方式 製造原価 輸入者と生産者との間の取引に基づき本邦へ到着し、原価を確認できること。通常の利潤・一般経費と輸入港までの運賃等を加える。
特殊な方法 先行方法を合理的に調整した価格等 先行方法で決定できない場合に進む。
取引価格方式を使えない事例 使える可能性がある事例
贈与、無償サンプル、委託販売、賃貸借、本支店間移動。 売買による輸入で、現実支払価格と加算要素が立証できる。
買手が本邦に住所・本店等を有しない者である取引(輸入取引に該当しない)。 外国の売手と本邦に居住する買手との通常の売買。
処分制限が価格へ実質的に影響する。 販売地域の制限、法令上の制限、価格へ実質的影響のない制限だけがある。
特殊関係が取引価格へ影響する。 特殊関係はあるが価格へ影響しない。

結論を分ける事実

無償だから「課税価格ゼロ」ではない。取引価格方式を離れる理由を確定し、次の方法へ順番に進む。

典型的なひっかけ――誤った考え方

ミニドリル

無償輸入品について、同時期・同国産の同種貨物の適切な取引価格45,000円と、類似貨物44,000円がある。差異調整は不要。どちらを先に使うか。

解答

同種貨物45,000円。類似貨物より同種貨物を優先する。

変質・損傷があった場合

同じ損傷でも、いつ生じたかで制度が変わる。

変質・損傷が生じた時点 処理 根拠
課税物件確定の時(通常は輸入申告の時)まで 損傷がなかったものとした課税価格から、減価相当額を控除する。どの評価方法でも同じ。 関税定率法4条の5
課税物件確定の時の後、輸入許可まで 課税価格は変えず、関税の軽減で扱う。 関税定率法10条1項