第2部 税率の選択と税額計算
論点2F 過少申告加算税・無申告加算税の計算――丸めてから乗じ、乗じてから丸める
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回の計算問題で2問(第57・59回)。第59回は特恵否認→修正申告→過少申告加算税という複合問題。主な根拠: 関税法12条の2・12条の3。
加算税の条文要件・正誤肢の観点は論点6Iで扱う。本論点は計算に絞る。
判断課題
修正申告や更正により増差税額が生じた。どの金額に、何%を、どの順序で乗じ、どこで端数を落とすか。
原則
加算税の計算は、次の五段階を固定した順序で進める。順序を入れ替えると答が変わる。
- 基礎となる税額を出す。修正申告・更正・決定に基づき納付すべき税額(増差税額)である。正当な理由があると認められる部分等は控除する(関税法12条の2第4項)。
- 1万円未満を切り捨てる。基礎税額が1万円未満なら加算税は課さない(関税法12条の2第6項・12条の3第8項が12条3項を読み替えて準用)。
- 本則の割合を乗じる。過少申告は10%、無申告は15%。更正(決定)があるべきことを予知しないでした申告なら、それぞれ5%・10%に下がる。
- 加重分を足す。過少申告は「当初申告に係る税額と50万円のいずれか多い額」を超える部分に5%。無申告は50万円を超える部分に5%。
- 確定額を丸める。100円未満を切り捨て、加算税の額が5,000円未満なら徴収しない(同じ準用規定により、12条4項の「千円」を「五千円」と読み替える)。
| 過少申告加算税(関税法12条の2) | 無申告加算税(関税法12条の3) |
|---|---|
| 期限内の当初申告があった後の修正申告・更正が対象。本則10%。 | 期限後特例申告書の提出・決定、およびその後の修正申告・更正が対象。本則15%。 |
| 更正を予知しないでした修正申告は5%(1項かっこ書き)。 | 更正決定を予知しないでした申告は10%(1項かっこ書き)。 |
| 調査通知前の自発的な修正申告には課さない(5項)。 | 調査通知前でも5%は課される(6項)。 |
| 加重は「当初申告税額と50万円の多い額」の超過部分に5%(2項)。 | 加重は50万円の超過部分に5%(2項)。加算後累積納付税額が300万円を超えるときは、50万円以下15%・50万円超300万円以下20%・300万円超30%の区分課税に切り替わる(3項)。 |
| どちらも賦課課税方式により確定する(関税法6条の2第1項2号ヘ)。延滞税が特別の手続を要しないで確定する(同条2項)のと対になる。 | 過去5年内に無申告加算税等を課された等の場合は、さらに10%が加重される(4項)。 |
結論を分ける事実
- 期限内の当初申告があったか(過少申告か、無申告か)。
- その修正申告が、更正(決定)を予知してされたものか。調査通知の前か後か。
- 増差税額が「当初申告税額と50万円の多い額」を超えるか。無申告では300万円を超えるか。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 5%加重の比較対象を常に50万円だと思い込む誤り。当初申告税額が50万円を超えるときは、50万円ではなくその税額と比べる。
- 「調査通知前の自発的申告なら加算税はゼロ」という思い込み。ゼロになるのは過少申告加算税だけで、無申告加算税は調査通知前でも5%課される。
- 「本則が5%に軽減されたのだから加重もない」という誤り。12条の2第2項が除外するのは5項(調査通知前で不適用となる場合)だけであり、調査通知後・更正予知前の修正申告では5%+加重5%が併存する。
- 端数処理の段階の取り違え。増差税額をまず1万円未満切捨てしてから割合を乗じるのであり、乗じた後に1万円単位へ丸めるのではない。
- 不徴収の限度額を1,000円とする誤り。加算税では読替えにより5,000円である。
- 割合と金額(10%・5%・15%・50万円・300万円・1万円・100円・5,000円)は改正が続いている領域であり、必ず関税法12条の2・12条の3の現行条文で確認すること。
ミニドリル
A:期限内の当初申告に係る税額が300,000円の貨物につき、税関の調査を受け、更正があるべきことを予知して修正申告をした。増差税額は728,500円である。B:期限内の当初申告に係る税額が800,000円の貨物につき、調査通知を受けた後、更正があるべきことを予知する前に修正申告をした。増差税額は同じく728,500円である。過少申告加算税の額はそれぞれいくらか。
解答
A:基礎税額728,500円の1万円未満を切り捨てて720,000円。本則は更正予知後の修正申告なので10%を乗じ、720,000円×10%=72,000円。比較額は当初申告税額300,000円と500,000円の多い方で500,000円、超える部分は720,000円−500,000円=220,000円、220,000円×5%=11,000円。合計83,000円(100円未満の端数なし、5,000円以上なので徴収する)。
B:基礎税額は同じく720,000円。ただし更正を予知しないでした修正申告なので本則は5%となり、720,000円×5%=36,000円。比較額は当初申告税額800,000円と500,000円の多い方で800,000円、720,000円はこれを超えないため加重は生じない。合計36,000円。なお、Bの当初申告税額が300,000円のままであれば、5%に軽減されても加重は生きるので、36,000円+11,000円=47,000円となる。
最低限おさえる型
増差税額を1万円未満切捨て→本則(過少10%・無申告15%、更正予知前は5%・10%、調査通知前は0%・5%)→(当初申告税額と50万円の多い方)の超過部分×5%を加算→100円未満切捨て→5,000円未満なら徴収しない。