第7部 通関業法の論点

論点7J 通関士の審査・記名――対象は政令が列挙した四つだけ

第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日

過去問実績: 第54〜59回で7問(6回・政令が列挙する審査対象書類がほぼ毎年)。主な根拠条文: 通関業法第14条・第21条、通関業法施行令第6条。

判断課題

目の前の通関書類に通関士の審査・記名が必要か。必要なのに欠けていたとき、その申告等の効力はどうなるか。

原則

通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類のうち政令で定めるものについて、通関士にその内容を審査させ、かつ記名させなければならない(通関業法第14条)。この義務は「通関士が通関業務に従事している営業所における通関業務に係るもの」に限られ、対象書類は施行令第6条が四つを列挙する。そして第21条は、記名の有無が通関書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならないと定める。義務違反は書類の効力の問題ではなく、通関業者に対する監督処分の問題である。

審査・記名を要する 要しない
法第2条第1号イの(1)の(一)〜(五)に掲げる申告・申請に係る申告書および申請書。輸出入申告書、特例申告の承認申請書、船用品・機用品の積込申告書、蔵入・移入・総保入等の承認申請書、輸出申告の特例(特定輸出者)の承認申請書がこれに当たる(通関業法施行令第6条第1号) インボイス、パッキングリスト、運賃明細等の添付書類。政令の列挙に含まれない
不服申立書(通関業法施行令第6条第2号)、特例申告書(通関業法施行令第6条第3号) 通関士が通関業務に従事していない営業所の通関業務に係る書類(通関業法第14条括弧書)
修正申告書および更正請求書(通関業法施行令第6条第4号) 他人の依頼に応じたものでない書類、および関連業務に係る書類

結論を分ける事実

  1. その書類が施行令第6条の列挙に当たるか。
  2. その営業所に通関士が現に従事しているか。
  3. 他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類か。

典型的なひっかけ――誤った考え方

ミニドリル

A:通関士が従事する営業所で、依頼者の求めに応じ、輸入許可後の修正申告書を作成して税関へ提出した。B:同じ営業所で、輸入申告に添付するインボイスと運賃明細書を整えて提出した。通関士の審査・記名が必要なのはどちらか。

解答

Aは必要である。修正申告書は施行令第6条第4号に列挙され、第14条の審査・記名の対象となる。仮に記名を欠いたまま提出しても、第21条により修正申告そのものの効力は失われず、通関業者に対する第34条の監督処分の問題となる。Bは不要である。添付書類は施行令第6条のいずれの号にも当たらない。同じ営業所・同じ依頼でも、書類の種類で結論が割れる。

最低限おさえる型

対象=①申告書・申請書(通関業法第2条第1号イ(1)の(一)〜(五))、②不服申立書、③特例申告書、④修正申告書・更正請求書。審査+記名(押印不要)、通関士が従事する営業所限定、記名を欠いても書類の効力は変わらない。