第7部 通関業法の論点
論点7N 通関士の資格・確認・資格喪失――資格は業者ごとに生まれ、業者ごとに消える
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で12問(6回・最多タイ)。主な根拠条文: 通関業法第31条・第32条(通関業法第6条・第25条・第29条を含む)。
判断課題
試験合格者を通関士として従事させられるか。すでに通関士である者が、どの事実によって通関士でなくなるか。
原則
通関士試験に合格した者は、どの税関の管轄区域内においても通関士となる「資格」を有する(通関業法第25条)が、それだけでは通関士ではない。通関業者が財務大臣に届け出て確認を受け、その業者の通関業務に従事して初めて通関士となる(通関業法第2条第4号・第31条第1項)。確認は通関業者ごとに行われるため、その業者の業務から離れれば通関士でなくなる。
| 確認(通関業法第31条) | 資格の喪失(通関業法第32条) |
|---|---|
| 通関業者が、合格者を「通関士という名称を用いて」その通関業務に従事させようとするときに、氏名・従事させる営業所の名称・合格年度・合格証書の番号等を財務大臣に届け出て確認を受ける。届け出るのは業者であり、合格者本人の申請ではない | ①確認を受けた通関業者の通関業務に従事しないこととなったとき |
| 拒否事由①: 第6条第1号から第9号までのいずれかに該当する者(法人・事業者に係る第10号・第11号は含まれない) | ②第6条第1号から第9号までのいずれかに該当するに至ったとき |
| 拒否事由②: 第6条第4号イの法律(関税法第108条の4から第112条まで等)に該当する違反行為をした者で、当該違反行為があった日から2年を経過しないもの | ③第29条第1項により通関士試験の合格の決定が取り消されたとき |
| 拒否事由③: 第34条第1項により通関業務の停止処分を受けた通関業者(処分の基因となった違反行為をした者を含む)、第35条第1項により従事を停止された通関士で、それぞれ停止の期間が経過しないもの | ④偽りその他不正の手段により第31条第1項の確認を受けたことが判明したとき |
結論を分ける事実
- 「通関士という名称を用いて」その業者の通関業務に従事させるのか。
- 期間の起算が違反行為の日(2年・第31条第2項第2号)か、刑の執行終了日・通告の履行日(3年・第6条第4号)か、処分を受けた日(2年・第6条第8号)か。
- その事実が第32条の4事由に当たるか。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 転職・転属しても通関士資格は続くという思い込み。確認は通関業者ごとであり、その業者の業務に従事しなくなれば通関士でなくなる(改めて確認を受ければ再び通関士となれる)。
- 資格を失うと試験合格の効力も失うという誤り。合格の決定が取り消された場合(通関業法第29条第1項)を除き、合格自体は失われない。
- 確認拒否事由の「違反行為から2年」を3年とする数字入替え。関税法違反行為ベースの拒否事由は2年であり、罰金刑・通告処分を受けた場合の3年(通関業法第6条第4号)とは別である。
- 従業禁止処分(2年間)を受けた者は期間経過後も確認を受けられないという誤り。第6条第8号により処分を受けた日から2年で欠格が解消し、確認を受けうる。
- 確認の届出を合格者本人がするという誤り。届け出るのは通関業者である。
ミニドリル
A:通関士甲がX社を退職し、Y社の通関業務に従事することとなった。B:通関士乙が関税法第111条に該当する違反行為をして通告処分を受け、令和8年4月1日にその通告の旨を履行した。それぞれ通関士の資格はどうなるか。
解答
Aは、第32条第1号により、X社の通関業務に従事しないこととなった時点で通関士でなくなる。ただし試験の合格は失われないため、Y社が改めて第31条第1項の確認を受ければ再び通関士となる。Bは、通告の旨を履行した日から3年を経過しない間、第6条第4号に該当するから、第32条第2号により通関士でなくなり、その間は第31条第2項第1号により確認も受けられない。なお「違反行為の日から2年」は第31条第2項第2号の拒否事由であり、Bのように通告処分を受けた場合の3年とは基準が異なる。
最低限おさえる型
通関士=業者ごとの確認制(届け出るのは業者、あて先は財務大臣)。従事しなくなれば資格喪失、ただし試験合格は失わない。拒否事由の型=欠格(通関業法第6条第1〜9号)+違反行為から2年+停止期間中。