第7部 通関業法の論点
論点7O 監督処分・懲戒処分――相手方と数字の対応で解く
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で11問(6回)。主な根拠条文: 通関業法第34条・第35条(通関業法第36条・第37条・第39条を含む)。
判断課題
処分の相手方が通関業者か通関士かを見定め、そのうえで処分の種類・期間・事前手続が条文どおりかを判定する。
原則
監督処分は通関業者に、懲戒処分は通関士に対する処分であり、種類・期間・事前手続がすべて対応関係で問われる。
| 監督処分(通関業法第34条)=通関業者に対する処分 | 懲戒処分(通関業法第35条)=通関士に対する処分 |
|---|---|
| 事由①: 通関業者が、通関業法・同法に基づく命令・これらに基づく処分・許可に付された条件、または関税法その他関税に関する法令に違反したとき | 事由: 通関士が通関業法または関税法その他関税に関する法令に違反したとき。他人の行為を理由とする処分はない |
| 事由②: 役員その他通関業務に従事する者に、法令違反行為または通関業者の信用を害するような行為があった場合において、通関業者の責めに帰すべき理由があるとき | — |
| 処分: 1年以内の期間を定めた通関業務の全部または一部の停止、または許可の取消し。戒告はない | 処分: 戒告、1年以内の期間を定めた通関業務への従事の停止、または2年間の従事の禁止 |
| 事前手続: 審査委員(3人以内・第39条第1項)の意見を聴く | 事前手続: 当該通関士がその業務に従事する通関業者の意見を聴く |
| 処分後: 遅滞なくその旨を公告する(通関業法第34条第2項) | 処分後: 第34条第2項を準用し、遅滞なくその旨を公告する(通関業法第35条第2項) |
いずれの処分も、その理由を付記した書面により処分を受ける者に通知しなければならない(通関業法第37条第2項)。また、何人も、通関業者または通関士に第34条第1項・第35条第1項に該当する事実があると認めたときは、財務大臣に対しその事実を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる(通関業法第36条)。
結論を分ける事実
- 処分の相手方が通関業者か通関士か。
- 期間が「1年以内」(期間を定める)か「2年間」(法定の固定期間)か。
- 従業者の違反について、通関業者の責めに帰すべき理由があるか(通関業法第34条第1項第2号)。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 処分の相手方と内容の取違え。業者=停止(1年以内)・許可の取消し、通関士=戒告・停止(1年以内)・禁止(2年間)という対応を崩してくる。戒告は通関士だけの処分である。
- 従業禁止を「2年以内の期間を定めて」とする誤り。禁止は一律「2年間」であり、期間を定めるのは停止(1年以内)の方である。
- 意見聴取の相手の取違え。監督処分=審査委員、懲戒処分=当該通関士が従事する通関業者である。
- 調査の申出(通関業法第36条)ができるのは利害関係人に限るという誤り。「何人も」申し出ることができる。
- 公告は監督処分だけに必要という誤り。懲戒処分にも第35条第2項により準用される。
ミニドリル
A:通関業者Xの通関士甲が申告価格を過少に記載し、関税法に違反した。財務大臣は甲に対し「2年以内の期間を定めて通関業務に従事することを禁止する」処分をできるか。B:同じ事案で、Xの管理体制にも落ち度があった。Xにはどのような処分ができ、その前に誰の意見を聴くか。
解答
Aはできない。第35条第1項の従業禁止は「二年間」と法定されており、期間を定める処分ではない。期間を定めるのは「一年以内の期間を定めて……従事することを停止し」の方である。処分に先立ち、第37条第1項により甲が業務に従事する通関業者Xの意見を聴かなければならない。Bは、通関業務に従事する者の違反行為につきXに責めに帰すべき理由があるから第34条第1項第2号に当たり、1年以内の期間を定めた通関業務の全部もしくは一部の停止、または許可の取消しができる。この処分の前には第37条第1項により審査委員(3人以内・第39条第1項)の意見を聴く。いずれの処分も理由を付記した書面で通知し、処分後は遅滞なく公告する。
最低限おさえる型
業者=1年以内の停止 or 許可の取消し(審査委員の意見)。通関士=戒告・1年以内の停止・2年間の禁止(所属業者の意見)。いずれも理由付記の書面で通知し、処分後は遅滞なく公告する。