3科目ガイド 05
第4章 第2科目・関税法等ミニ講義
30秒想起:自社貨物を自社で申告する行為は、通関業法上の通関業か。通関士試験合格後、勤務先で通関士として従事するまでに何が必要か。
4-1 関税法を時間軸で読む
関税法の大量の規定は、次の時間軸へ配置すると整理しやすい。
外国貨物が到着する → 保税地域で管理する → 課税物件・適用法令を確定する → 申告・審査・検査を行う → 税額を確定・納付する → 輸入を許可する → 事後に修正・更正・徴収・還付する
「いつの貨物の状態を見るか」と「いつの法令・税率を使うか」は別論点である。前者が課税物件の確定時期、後者が適用法令であり、原則と例外を対にして覚える。
4-2 外国貨物・内国貨物と輸出入
関税法上の「輸入」「輸出」は、日常語の海外発送・海外到着と完全には一致しない。外国貨物を本邦に引き取ること、内国貨物を外国へ向けて送り出すことを軸に、みなし規定や保税地域での消費・使用を確認する。
貨物の法的地位が変わる時点は、課税、保税、運送、処罰の前提となる。設問では「どこにあるか」だけでなく、「許可前か後か」「外国貨物か内国貨物か」を書き込む。
外国から到着 ── 輸入許可前 ──[輸入許可]── 国内へ引取り
外国貨物 内国貨物
場所だけでなく、許可の前後と貨物の地位を書く。
4-3 税額確定と納税義務
関税には申告納税方式と賦課課税方式がある。通常の商業貨物の輸入では、納税義務者が課税標準・税額を申告し、その申告により税額が確定する申告納税方式が中心である。
申告後の是正手段は方向で分ける。
- 税額が不足する:修正申告、税関長による更正。
- 税額が過大である:更正の請求。
- 申告がない:税関長による決定。
ここへ延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税が接続する。附帯税は、どの是正手続が、いつ、誰の指摘の前後で行われたかにより変わる。
4-4 保税制度
保税制度は、外国貨物を関税未納のまま置き、運び、加工・製造し、展示するための管理制度である。指定保税地域、保税蔵置場、保税工場、保税展示場、総合保税地域は、設置根拠、許可・指定の主体、蔵置期間、可能な行為が異なる。
学習時には施設名を横に並べるより、貨物の目的で整理する。
- 荷さばき・一時蔵置
- 長期蔵置
- 加工・製造
- 展示
- 複合機能
保税運送は、外国貨物の法的地位を保ったまま保税地域等の間を運ぶ制度である。蔵置場で自由にできる行為、税関長の許可が必要な行為、届出で足りる行為を分ける。
4-5 関税定率法――分類・評価・税率
関税額の骨格は次の式である。
関税額 = 課税標準 × 関税率
しかし、計算の前に三つの判断が必要になる。
- 分類:貨物が関税率表のどの番号に属するか。
- 評価:課税価格又は課税標準数量はいくらか。
- 税率:原産地・時期・証明等を踏まえ、どの税率を適用するか。
評価は、まず取引価格方式を使えるかを判定する。使えるなら、次の式が出発点になる。
課税価格 = 現実支払価格 + まだ含まれていない法定加算要素
使えない場合は、自由に見積もらず、法定の順序で別の方法へ進む。
取引価格方式
↓ 使えない
同種・類似貨物の取引価格 → 国内販売価格から逆算 → 製造原価から積算 → 特殊な方法
さらに、取引の型によって計算の入口や運送費の扱いが変わる。
| 取引・貨物の型 | 先に押さえる処理 |
|---|---|
| 委託加工貿易 | 加工賃だけで終わらず、無償提供した材料等の費用を加える。 |
| 航空機で運送された無償見本等 | 要件を満たすときは、運賃・保険料を通常の運送方法による額へ置き換える。 |
詳細は『ケースで身につく通関実務』の論点1D・論点1H・論点1Nで扱う。
4-6 輸出入申告と他法令
輸出又は輸入しようとする者は、税関長に申告し、必要な検査を経て許可を受ける。申告時に提出・提示する書類、申告先、貨物を置く場所の原則と例外を整理する。前節で分類・評価・税率という申告内容を決めた後、本節で申告手続の外枠へ接続する。
関税法第70条に関係する他法令の許可・承認等は、税関の輸出入許可とは別の行政判断である。外為法第6章は、貨物の輸出・輸入に関する許可・承認を扱う。税関へ申告したことだけで他法令要件を満たすわけではない。
他法令の許可・承認等 ── 確認 ──┐
├→ 税関の輸出入許可
関税法上の申告・審査・検査 ──────┘
税関へ申告しただけでは、他法令の許可を得たことにならない。
4-7 減免税、特恵、EPA、特殊関税
| 制度群 | 何をする制度か | 最初に確認するもの |
|---|---|---|
| 減免税 | 法定要件を満たす貨物の関税を軽減・免除・払戻しする | 用途、再輸出、手続時期、事後管理 |
| 一般特恵・特別特恵、WTO協定税率、EPA税率 | 資格と手続を満たす貨物へ所定税率を適用する | 対象国・品目、原産地規則、証明手続 |
| 不当廉売関税、相殺関税、緊急関税等 | 所定の事態に追加的・特別な関税を課す | 発動要件、調査、課税対象 |
税率表の最小値を選ぶ前に、その制度を使う資格を確認する。
この章の振り返り
- 関税法は貨物の時間軸へ置くと整理できる。
- 課税物件の確定時期、適用法令、納税義務者を混同しない。
- 関税額の前に、分類・評価・税率適用要件の三判断がある。
一次資料
- e-Gov法令検索「関税法」:https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000061?occasion_date=20260701 (2026年8月18日参照)
- e-Gov法令検索「関税定率法」:https://laws.e-gov.go.jp/law/143AC0000000054?occasion_date=20260701 (2026年8月18日参照)
- e-Gov法令検索「外国為替及び外国貿易法」:https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000228?occasion_date=20260701 (2026年8月18日参照)
- 税関「税率決定までの流れ」:https://www.customs.go.jp/tariff/mikata/mikata2.htm (2026年8月18日参照)