第1部 現実支払価格と課税価格
論点1H 無償・値引提供――材料、工具、消耗品
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
判断課題
買手が売手へ無償提供したものは、何でも加算するか。
原則
輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手が無償又は値引きして直接・間接に提供した次の物品等に要する費用は加算する。買手が対価を得て(有償で)提供したものは、この加算要素に当たらない。
- 輸入貨物に組み込まれる材料・部分品等
- 生産に使用される工具・鋳型等
- 生産過程で消費される物品
- 一定の国外開発役務
課税価格に算入する事例 [加算] |
課税価格に算入しない事例 [別2] |
|---|---|
| 衣類に組み込まれる生地を無償提供する。 | 売手の一般事務用プリンターを贈り、生産との関連がない。 |
| 今回の部品生産専用の金型を無償提供する。 | 買手が国内販売店へ展示什器を無償提供する。 |
| 生産工程で消費する触媒を値引提供する。 | 買手が自己のために輸入後の市場調査を行う。 |
| 提供する部分品の調達を代理人へ委託し、その業務の対価を払う。 | 輸入貨物そのものの買付けを代理させた真正な買付手数料。 |
結論を分ける事実
買手による提供、無償又は値引き、輸入貨物の生産・輸入取引との関連という三点を確認する。工具は貨物へ物理的に組み込まれなくても対象になり得る。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 売手が所有する工具の減価償却費まで「買手の無償提供」とみなす誤り。
- 提供物の全額を今回分へ加算し、複数回の生産への合理的配賦を忘れる誤り。
- 提供物を売手工場まで運ぶ費用を無視する誤り。
- 提供物の取得を代理人へ委託した手数料を、買付手数料と同じく非加算と考える誤り。
- 提供が有償か無償かを確かめずに加算する誤り。工具でも有償提供なら、この加算要素には該当しない。
- 提供のための運送費用を、負担者を確かめずに加算する誤り。売手が負担した分は入らない。
ミニドリル
買手が100万円で取得した金型を無償提供した。金型は合計1万個の生産に使用され、今回2,000個を輸入する。使用量に比例する配賦が合理的で、取得後の提供運賃等はない。今回の加算額はいくらか。
解答
20万円。100万円×2,000個÷1万個。全額を今回へ加算しない。
委託加工貿易の型
加工賃だけの仕入書でも、課税価格は加工賃だけではない。
買手(委託者)が外国の受託者へ原材料を無償提供し、加工賃を支払って加工後の製品を輸入する場合は、加工賃を対価とする委託者(買手)・受託者(売手)間の売買とみなし、輸入取引として扱う。
無償提供した物品・役務の評価額は、入手経路で分ける。
| 入手経路 | 費用の基礎 | 共通して加えるもの |
|---|---|---|
| 買手が自ら生産・開発したもの | 生産・開発に要した費用 | 提供のための運賃等 |
| 特殊関係者から直接取得・提供を受けたもの | 生産・開発に要した費用 | 提供のための運賃等 |
| 上記以外 | 取得・提供を受けるために通常要する費用 | 提供のための運賃等 |
加える運賃・保険料等は、買手により負担されるものに限る。提供物を売手の工場まで運ぶ費用を売手が負担したのであれば、その額は加算しない。
「取得するために要した費用」には、買手が自己の代理人へ支払う取得業務の手数料等を含める。 輸入貨物の買付手数料(論点1F)が除外されるのは2号イの話で、提供物品の調達を代理させた手数料はここで加算する。
委託加工ドリル
買手は、特殊関係のない国内業者から150万円で取得した生地を外国の縫製業者へ無償提供し(提供運賃10万円)、加工賃300万円を支払って全量を製品として輸入した。海上運賃・保険料は20万円。他の要素はない。課税価格はいくらか。