第5部 分類・EPA・通関手続

論点5D EPA・締約国原産地証明書等の手続――証明の方式は協定ごとに違う

第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日

過去問実績: 第54〜59回で5C・5Dあわせて19問(6回・毎回3〜4問)。暫定法12条の4(締約国原産品であることの確認)は第58・59回連続出題。主な根拠: 関税暫定措置法12条の4、関税法68条、関税法施行令61条。

判断課題

EPA税率の適用を受けるために、何を、いつまでに、どこへ出すか。税関長はどこまで確認でき、どんなときに便益を否認できるか。

原則

EPA税率の適用を受けようとする者は、その貨物が締約国原産品であることを証明する書類を、原則として輸入申告の際に提出する(関税法68条、施行令61条1項2号・4項)。証明の方式は協定により異なり、大きく第三者証明・認定輸出者証明と自己申告に分かれる。有効期間はいずれも発給または作成の日から1年で、輸入申告の日を基準に判定する(施行令61条5項)。

締約国原産地証明書(第三者証明・認定輸出者) 締約国原産品申告書等(自己申告)
協定締約国の権限ある当局、またはその認定を受けた者(認定輸出者)が、締約国原産品であることを証明した書類(施行令61条1項2号イ(1))。 輸入者・輸出者・生産者が、締約国原産品であることを申告する書類を作成する(同(2))。
日ASEAN・日メキシコ・日タイ・日インドネシア等の従来型EPAが採る。RCEPは第三者証明・認定輸出者・自己申告を併用する。 CPTPP・日EU・日英・日米が採る。CPTPPは条文上も締約国原産地証明書の定義から明文で除かれており、自己申告以外の方式がない。
証明書1通で足りる。 契約書・仕入書・価格表・総部品表・製造工程表その他の裏付書類を併せて提出する(税関長が不要と認めるときを除く)。

提出を要しない貨物は、①課税価格の総額が20万円以下の貨物と、②税関長が貨物の種類または形状によりその原産地が明らかであると認めた貨物(ただし日インドネシア協定・日ASEAN協定の便益を受ける貨物を除く)である。疑義があるときは税関長が締約国原産品かどうかを確認でき(暫定法12条の4第1項)、その方法は輸入者への資料提供の求め、締約国の権限ある当局・税関当局・輸出者・生産者への質問および資料提供の求め、同意を得た実地調査、締約国当局が行う検査への税関職員の立会いの求め等に及ぶ。

結論を分ける事実

  1. 適用する協定がどの証明方式を持つか(自己申告があるか、第三者証明があるか)。
  2. 課税価格の総額が20万円以下か。
  3. 税関長の質問・資料要求に対し、定められた期間内に十分な回答・資料を出したか。

典型的なひっかけ――誤った考え方

ミニドリル

A:CPTPP税率の適用を受けようとする、課税価格の総額15万円の貨物。B:日ASEAN協定の税率の適用を受けようとする、課税価格の総額25万円の貨物で、税関長が貨物の種類・形状によりその原産地が明らかであると認めたもの。証明書類の提出は必要か。

解答

A:課税価格の総額が20万円以下なので、締約国原産品申告書等の提出を要しない。なお提出を要する場合でも、CPTPPには第三者証明の制度がないため自己申告によることになる。B:課税価格の総額が20万円を超えるので、金額による省略はできない。もう一つの省略事由である「種類または形状により原産地が明らかと税関長が認めた貨物」は、日インドネシア協定と日ASEAN協定の便益を受ける貨物には適用されないため、締約国原産地証明書の提出が必要である。金額と協定名の両方を読まないと結論を誤る。

最低限おさえる型

証明書類は輸入申告の際に提出(20万円以下は不要・有効期間は発給/作成から1年)→方式は協定ごとに第三者証明か自己申告か(CPTPP・日EU・日英・日米は自己申告のみ)→疑義があれば税関長が確認(資料要求・質問・同意を得た実地調査)→無回答・資料不十分・調査拒否なら便益否認。