第6部 関税法等の制度論点
論点6D 納税義務者――原則は輸入者、事故は施設・運送の責任者
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で6問(6回)。主な根拠条文: 関税法第6条・第45条・第65条ほか。
判断課題
保税地域や保税運送の途中で外国貨物が亡失・滅却・不到着となったとき、誰から関税を徴収するか、そして徴収しなくてよい場合に当たるかを判定する。
原則
関税は、別段の規定がある場合を除き、貨物を輸入する者が納める義務を負う(関税法第6条)。「別段の規定」は、貨物を管理していた者に納税義務を負わせる特別納税義務者の規定であり、場面と徴収の相手方の対応で覚える。
| 場面 | 徴収の相手方 |
|---|---|
| 保税蔵置場にある外国貨物の亡失・滅却(関税法第45条。保税工場・保税展示場・総合保税地域に準用) | 当該保税蔵置場の許可を受けた者から直ちに徴収 |
| 保税工場の場外作業の指定場所に指定期間経過後も貨物・製品が残った場合(関税法第61条第5項) | 当該保税工場の許可を受けた者から直ちに徴収 |
| 保税運送・難破貨物等運送の承認を受けた貨物が指定期間内に到着しない場合(関税法第65条第1項) | 運送の承認を受けた者から直ちに徴収 |
| 特定保税運送に係る貨物が発送の日の翌日から起算して7日以内に到着しない場合(関税法第65条第2項) | 特定保税運送者から直ちに徴収 |
いずれも輸出の許可を受けた貨物は徴収の対象から除かれる。また、災害その他やむを得ない事情により亡失した場合、又はあらかじめ税関長の承認を受けて滅却された場合は徴収しない(関税法第45条第1項ただし書、第65条で準用)。貨物が腐敗・変質し又は他の外国貨物を害するおそれがある等の事情で滅却がやむを得ないときは、税関長は滅却の承認をしなければならない(関税法第45条第2項)。亡失したときは、許可を受けた者・運送承認者等は直ちにその旨を税関長に届け出る義務を負う。
結論を分ける事実
- 事故がどの制度(蔵置・場外作業・運送)の下で起きたか。それに応じて「施設の許可を受けた者」か「運送承認者・特定保税運送者」かが決まる。
- 亡失の原因が災害その他やむを得ない事情か(盗難や管理不備は当たらない)。
- 滅却について「あらかじめ」税関長の承認を受けているか(事後の承認では徴収を免れない)。
- 輸出の許可を受けた貨物か(徴収の対象外)。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 「保税蔵置場に貨物を置いた輸入者から徴収する」という誤り。徴収先は施設の許可を受けた者であり、貨物の所有者・輸入者ではない。
- 災害による亡失や承認済みの滅却まで徴収対象に含める誤り。これらは明文で除外されている。
- 輸出の許可を受けた貨物の亡失を徴収対象とする誤り。外国貨物ではあるが、徴収の対象から除かれている。
- 特定保税運送の徴収先を「運送の承認を受けた者」とする誤り。特定保税運送は個別承認を要しない制度であり、徴収先は特定保税運送者である。
ミニドリル
A:保税蔵置場に置かれた外国貨物が盗難により亡失した。B:同じ保税蔵置場に置かれた外国貨物が台風による高潮で流失した。それぞれ関税は徴収されるか。
解答
Aは当該保税蔵置場の許可を受けた者から直ちに徴収される(関税法第45条第1項本文)。「災害その他やむを得ない事情」とは震災・風水害等の災害に準ずる理由をいい、窃盗による盗難等はこれに含まれない(関税法基本通達23-9・45-1)。Bは災害により亡失した場合に当たり、徴収されない(同項ただし書)。いずれの場合も、許可を受けた者は直ちに亡失の旨を税関長に届け出なければならない(同条第3項)。
最低限おさえる型
原則=輸入者。亡失・滅却=施設の許可を受けた者、運送不到着=運送承認者(特定保税運送者)。災害亡失・承認滅却は免除。