第6部 関税法等の制度論点

論点6O 保税蔵置場・保税工場・総合保税地域――亡失・滅却は「許可を受けた者」から直ちに徴収

第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日

過去問実績: 第54〜59回で3問(3回)。主な根拠条文: 関税法第42条〜第62条の8。

判断課題

保税地域内の外国貨物が消えた(亡失・滅却)ときに誰から関税を取るか、どの手続が「許可・承認」でどれが「届出」かを判定する。

原則

保税蔵置場にある外国貨物(輸出の許可を受けた貨物を除く)が亡失し、又は滅却されたときは、当該保税蔵置場の「許可を受けた者」から直ちにその関税を徴収する(関税法第45条第1項本文)。徴収を免れるのは、災害その他やむを得ない事情による亡失と、あらかじめ税関長の承認を受けた滅却の2つだけである(同項ただし書)。貨物が腐敗・変質し又は他の外国貨物を害するおそれがある等の事情で滅却がやむを得ないときは、税関長は滅却の承認をしなければならない(同条第2項)。亡失したときは許可を受けた者が直ちに税関長に届け出る(同条第3項)。収容能力の増減・改築移転等の工事は「あらかじめ税関への届出」であり、許可・承認ではない(関税法第44条第1項)。令和8年度改正(令和8年6月1日施行)で、法令遵守規則に係る業務改善命令(関税法第45条の2)が新設され、保税工場・保税展示場・総合保税地域にも準用される。

保税工場は保税作業(外国貨物の加工・これを原料とする製造(混合を含む)・改装・仕分その他の手入れ)の場であり(関税法第56条第1項)、当該保税工場で使用する輸入貨物については入れた日から3月までの期間に限り保税蔵置場の許可を併せ受けたものとみなされる(同条第2項)。場外作業は税関長の「許可」(期間・場所指定)で行い、担保は必要があると認めるとき提供させることができる(関税法第61条第1項・第2項)。場外の貨物は指定期間満了までその保税工場にあるものとみなされ(同条第4項)、指定期間経過後も指定場所に貨物・製品が残っていれば、許可を受けた者から直ちに関税を徴収する(同条第5項)。総合保税地域は一団の土地等で蔵置・加工製造・展示等を総合的に行える税関長許可の地域である(関税法第62条の8)。

結論を分ける事実

  1. 滅却の承認が「あらかじめ」か事後か――事後では徴収を免れない。
  2. 亡失の原因が災害その他やむを得ない事情か、管理上の紛失か。
  3. 納税義務を負うのは貨物の所有者ではなく施設の許可を受けた者。
  4. その手続の性質――収容能力増減=届出、滅却=承認、場外作業=許可、見本持出=許可。

典型的なひっかけ――誤った考え方

ミニドリル

A:保税蔵置場の許可を受けた甲は、蔵置中の外国貨物が浸水で腐敗したため、あらかじめ税関長の承認を受けて滅却した。B:同じく許可を受けた乙は、蔵置中の外国貨物を誤って廃棄処分し、事後に税関長へ報告した。関税は徴収されるか、されるなら誰からか。

解答

Aからは徴収されない。あらかじめ税関長の承認を受けた滅却は第45条第1項ただし書に当たり、腐敗等でやむを得ない滅却には税関長の承認義務もある(同条第2項)。Bは事前承認のない滅却であり、ただし書に当たらないから、許可を受けた乙から直ちに関税を徴収する(同項本文)。事後報告は結論を変えない。

最低限おさえる型

亡失・滅却=許可を受けた者から直ちに徴収(災害亡失・事前承認滅却のみ除外)。工場のみなし蔵置場は3月、場外作業は許可・期間経過残存で徴収。業務改善命令(関税法45条の2)は令和8年新設。