第6部 関税法等の制度論点
論点6R 特恵関税――暫定法・政令指定・令和13年3月末までの時限
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で6問(6回)。主な根拠条文: 暫定法第8条の2〜第8条の4。
判断課題
その物品に特恵税率が及ぶか(受益国・品目・期限)、および特恵を止める仕組み(適用停止・便益否認)の発動要件を判定する。
原則
特恵関税は関税暫定措置法の制度である。経済が開発の途上にある国であって、関税について特別の便益を受けることを希望し、便益を与えることが適当であるものとして政令で定める国(特恵受益国等)の原産品につき、令和13年3月31日までに輸入されるものに適用される(暫定法第8条の2第1項)。品目の枠組みは農水産品と鉱工業品で正反対である。
| 農水産品(関税定率法別表第1〜24類) | 鉱工業品(同第25類以降) |
|---|---|
| 別表第二に掲げる物品のみ特恵(ポジティブ・リスト) | 原則特恵で無税。別表第三掲名品は係数税率、別表第四・第五掲名品は除外(ネガティブ・リスト) |
特恵受益国等のうち、国際連合総会の決議により後発開発途上国とされている国等で政令で定める国(特別特恵受益国)の原産品は、別表第五掲名品等を除き無税とする(同条第3項)。一の特恵受益国等の物品の国際競争力の程度その他の事情から便益が適当でないときは、国と物品を指定して便益を与えないことができる(同条第2項)。特恵物品の輸入増加により本邦産業に損害を与え又は与えるおそれがあり、保護のため緊急に必要があるときは、政令で定めるところにより、物品・期間(必要があるときは国又は地域)を指定して適用を停止できる(暫定法第8条の3)。税関長は、特恵受益国等原産品かどうかの確認のため、①輸入者への資料提供要求、②輸出者・生産者等への質問・資料要求、③同意を得た職員の現地調査、④相手国当局の検査への立会い・資料提供の求め、の方法をとることができ、期間内に回答・資料提供がない場合等には便益を与えないことができる(暫定法第8条の4第1項・第5項)。
結論を分ける事実
- 原産地が政令で定める特恵受益国等か、さらに特別特恵受益国か。
- 品目が第1〜24類(別表第二掲名のみ)か第25類以降(原則特恵・例外除外)か。
- 輸入の時期が令和13年3月31日までか。
- 発動要件の別――適用停止(暫定法第8条の3)は本邦産業の損害等、便益否認(暫定法第8条の4)は確認への不回答等。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 「特恵関税は関税定率法に規定されている」という誤り。暫定法第8条の2以下の時限措置(令和13年3月31日まで)である。
- 農水産品と鉱工業品の枠組みを逆にする誤り。「農水産品は原則特恵」「鉱工業品は掲名品のみ」はいずれも逆である。
- 「特別特恵受益国の原産品はすべて無税」という誤り。別表第五に掲げる物品等は除かれる。また特別特恵受益国は「国連総会決議による後発開発途上国」ベースの政令指定である。
- 「輸出者が税関長の質問に答えなかった場合でも、輸入者に落ち度がなければ特恵は否認されない」という誤り。定められた期間内の不回答・資料不十分は便益を与えないことができる事由である(暫定法第8条の4第5項)。
ミニドリル
A:特恵受益国X国原産の水産調製品(第16類)で、暫定法別表第二には掲げられていない品目であるものを輸入する(別表第二への掲名の有無は品目ごとに同表で確認する)。B:同じX国原産の一般機械(第84類)で、別表第三・第四・第五のいずれにも掲げられていない有税品を輸入する。それぞれ特恵税率は適用されるか。
解答
Aには適用されない。第1〜24類の農水産品は別表第二に掲げるものに限り特恵の対象となる(暫定法第8条の2第1項第1号)。通常の国定税率・協定税率によるほかない。Bには適用され、無税となる。第25類以降の鉱工業品は、別表第三(係数税率)・第四・第五(除外)に掲げるものと本来無税のものを除き、原則として無税の特恵を受ける(同項第3号)。同じ受益国原産でも、類の位置でポジ・ネガが反転する。
最低限おさえる型
特恵=暫定法・政令指定国・令和13年3月末まで。農水産品は掲名品のみ、鉱工業品は原則無税。LDCは別表第五等を除き無税。緊急停止(暫定法8条の3)と原産品確認・便益否認(暫定法8条の4)。