第6部 関税法等の制度論点

論点6S 特殊関税(不当廉売・相殺・緊急・報復)――誰が・何額以下・何年かで解く

第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日

過去問実績: 第54〜59回で6問(6回)。主な根拠条文: 定率法第6条〜第9条。

判断課題

肢に示された特殊関税について、課税主体・課税上限・指定期間・暫定措置の数値が正しい組合せかを判定する。4制度の数値を入れ替えるだけで誤りの肢が量産できるため、制度ごとの「型」の暗記が直接得点になる。

原則

いずれも政令(政府)により、別表の税率による関税のほかに課される割増関税である。軸になるのは、相手方の不公正行為に対抗する相殺・不当廉売と、公正な輸入の急増に対処する緊急関税の対比である。

相殺関税(定率法7条)・不当廉売関税(定率法8条) 緊急関税(定率法9条)
貨物・供給者又は供給国・期間(5年以内)を指定する。 貨物及び期間(暫定期間と通算して4年以内)を指定する。国・供給者の指定はない。
上限は補助金の額(相殺)、正常価格と不当廉売価格の差額=不当廉売差額(不当廉売)と同額以下。 上限は課税価格と本邦の適正卸売価格との差額から別表の税率による関税額を控除した額以下。
政府の調査は開始から1年以内(6月以内の延長可)。 政府の調査は開始から1年以内(必要な期間の延長可)。
暫定措置は、相殺=担保提供命令(4月以内)、不当廉売=暫定的な関税の賦課又は担保提供命令(9月以内で政令で定める期間)。 暫定措置は200日以内。指定期間は構造調整中なら暫定と通算して8年以内まで延長できる。

報復関税(定率法6条)は、WTO紛争解決機関等の承認の範囲内で、国及び貨物を指定し、課税価格と同額以下を課す。令和8年度改正で新設された迂回防止関税(定率法8条の2、令和8年4月1日施行)は、不当廉売関税が課されている場合に限り、①第三国で生産させた迂回品、②性質・形状が近似し用途が直接競合する貨物、③部品を輸出して本邦内で完成させる貨物、の3類型に不当廉売関税に相当する税額を課す。課税を免れる目的でない輸入と認められる場合等には適用せず、供給者は証拠を提出して課税しないことを求めることができる。調査は10月以内(6月以内の延長可)である。

結論を分ける事実

  1. どの特殊関税か(条名と対応する数値の組)。
  2. 課税主体は政府(政令)か。税関長・財務大臣とする肢は誤り。
  3. 期間の数値――指定5年/通算4年(8年)、暫定4月/9月/200日、調査1年/10月。
  4. 賦課課税方式となる部分(調査完了後に遡って課す相殺・不当廉売関税、論点6E)か。

典型的なひっかけ――誤った考え方

ミニドリル

A:ダンピング輸入の調査完了前に、政府が9月以内で政令で定める期間を指定し、暫定的な関税を課した。B:補助金交付貨物の調査完了前に、政府が9月以内の期間を指定し、暫定的な関税を課した。それぞれ正しいか。

解答

Aは正しい。不当廉売関税の暫定措置は、暫定的な関税の賦課又は担保提供命令を9月以内で政令で定める期間について行える(定率法8条9項)。Bは二重に誤り。相殺関税の暫定措置は4月以内であり、かつ、その内容は補助金の額に相当すると推定される額の担保提供命令に限られ、暫定的な関税は課せない(定率法7条10項)。

最低限おさえる型

相殺・不当廉売=政令・5年以内指定・補助金額/差額以下・調査1年(+6月)・暫定4月(担保)/9月(暫定関税可)。緊急=貨物と期間のみ・通算4年(延長8年)・暫定200日。迂回防止(定率法8条の2)=不当廉売の追随措置・調査10月・令和8年新設。