第6部 関税法等の制度論点
論点6U 輸出入してはならない貨物・知的財産侵害物品――号の異同と「没収」か「通知」か
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で10問(6回)。主な根拠条文: 関税法第69条の2〜第69条の21。
判断課題
肢の貨物が輸出禁制品(関税法69条の2)・輸入禁制品(関税法69条の11)のどちらの列挙に入っているか、税関長がとれる措置が没収廃棄・積戻し命令か「該当する旨の通知」かを判定する。
原則
輸出してはならない貨物(関税法69条の2)は①麻薬・向精神薬・大麻・あへん・けしがら・覚醒剤等、②児童ポルノ、③特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権・著作隣接権・育成者権の侵害物品、④不正競争防止法違反物品(周知表示混同惹起品・形態模倣品・営業秘密侵害品等)の4類型に限られる。輸入してはならない貨物(関税法69条の11)はこれより広い。
| 輸出側(関税法69条の2)にあるもの | 輸入側(関税法69条の11)だけにあるもの |
|---|---|
| 麻薬等、児童ポルノ、知財侵害物品(7権利)、不正競争防止法違反物品。 | 指定薬物、けん銃等、爆発物、火薬類、化学兵器用特定物質、一種・二種病原体等、偽造通貨・偽造有価証券等、公安又は風俗を害すべき物品。 |
| 知財の列挙に回路配置利用権はない。 | 知財に回路配置利用権が加わり、海外事業者が発送した意匠権・商標権侵害物品の「持込み行為」に係る貨物(9号の2、個人使用目的の輸入でも対象)も明記。 |
措置も二本立てである。税関長は、輸入側では麻薬等〜偽造通貨等(1〜6号)と知財・不正競争関係(9〜10号)を没収して廃棄し、又は積戻しを命ずることができるが、公安風俗物品(7号)と児童ポルノ(8号)は該当する旨の通知による(積戻し命令・没収はできない)。輸出側では麻薬等・知財・不正競争(1・3・4号)を没収して廃棄できる(輸出に積戻し命令はない)。児童ポルノ(2号)は輸出側でも通知である。知財侵害物品には権利者・輸出入者双方に主張立証の機会を与える認定手続(関税法69条の3・69条の12)と、権利者による輸出入差止申立て(関税法69条の4・69条の13、税関長は権利者に担保提供を命じ得る)がある。
結論を分ける事実
- 輸出か輸入か――公安風俗・けん銃・偽造通貨・回路配置利用権は輸入側だけ。
- どの号か――没収廃棄・積戻し命令の対象か、「通知」の対象(公安風俗・児童ポルノ)か。
- 知財侵害物品なら、認定手続を経て「侵害物品と認定された」段階か、差止申立ての段階か。
- 意匠・商標の侵害物品では、海外事業者からの発送(持込み行為)か否か。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 「公安又は風俗を害すべき物品は輸出してはならない貨物である」とする肢。輸入側のみの類型である(輸出規制は外為法等の別問題)。
- 児童ポルノを没収廃棄・積戻し命令の対象に含める肢。輸出・輸入とも「通知」の類型であり、通知に対する取消訴訟は審査請求前置となる(論点6V)。
- 輸出側にも積戻し命令があるかのような記述。積戻し命令は輸入側(関税法69条の11第2項)だけである。
- 回路配置利用権の侵害物品を輸出禁制品に含める肢。輸入のみの類型である。
ミニドリル
A:商標権を侵害する物品が輸入されようとしている。B:児童ポルノに該当する物品が輸入されようとしている。税関長はそれぞれ没収して廃棄できるか。
解答
Aはできる。商標権侵害物品は69条の11第1項9号の貨物であり、税関長は没収して廃棄し、又は積戻しを命ずることができる(同条2項。認定手続を経て侵害と認定されたものについて行う)。Bはできない。児童ポルノ(8号)は同条3項の「該当すると認めるのに相当の理由がある旨の通知」の対象であり、没収廃棄・積戻し命令(2項)の対象から除かれている。
最低限おさえる型
輸出4類型・輸入は麻薬からけん銃・偽造通貨・公安風俗まで広い。没収廃棄・積戻し命令(輸入1〜6・9〜10号)と「通知」(公安風俗・児童ポルノ)を区別。輸出側は没収廃棄のみ・児童ポルノは通知。