第6部 関税法等の制度論点

論点6W 罰則・両罰規定――3,000万円は麻薬・けん銃類型だけ

第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日

過去問実績: 第54〜59回で6問(6回)。主な根拠条文: 関税法第108条の4〜第118条。

判断課題

肢に示された犯罪類型と法定刑(拘禁刑の年数・罰金の額・引上げの上限)の組合せ、未遂・予備の処罰の有無、両罰規定の構造が正しいかを判定する。

原則

主要罰則は次の3段構えで覚える。いずれも拘禁刑と罰金の併科ができ、未遂も各本条の例により処罰され、予備罪もある。

罪 法定刑
禁制品輸出入罪のうち麻薬等の輸出(関税法108条の4第1項)・麻薬等〜偽造通貨等(輸入側1〜6号)の輸入(関税法109条1項) 10年以下の拘禁刑若しくは3,000万円以下の罰金、又は併科
禁制品輸出入罪のうち児童ポルノ・知財侵害物品・不正競争防止法違反物品(輸出側2〜4号)・公安風俗物品を含む輸入側7〜10号 10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又は併科
偽りその他不正の行為による関税逋脱罪(関税法110条) 10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又は併科。逋脱額等の10倍が1,000万円を超えるときは、罰金はその10倍相当額以下まで引上げ可
無許可輸出入罪・偽った申告等による輸出入罪(関税法111条) 5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又は併科。貨物の価格の5倍が1,000万円を超えるときは、罰金はその5倍以下

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人・使用人その他の従業者が、その業務又は財産について違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても罰金刑を科す(両罰規定、117条)。犯罪貨物等は没収し、没収できないとき等は犯罪が行われた時の価格に相当する金額を犯人から追徴する。没収・追徴が行われた貨物には関税を課さない(関税法118条)。

結論を分ける事実

  1. 罰金の上限3,000万円か1,000万円か――3,000万円は麻薬等・けん銃等・偽造通貨等(輸入1〜6号と輸出の麻薬等)の類型だけ。
  2. 拘禁刑10年か5年か――禁制品・逋脱は10年、無許可・虚偽申告は5年。
  3. 罰金の引上げ枠――逋脱は「額の10倍」、無許可・虚偽は「価格の5倍」。
  4. 両罰規定の「ほか」――行為者と法人の両方を罰する構造か。

典型的なひっかけ――誤った考え方

ミニドリル

A:覚醒剤を輸入した者の法定刑。B:児童ポルノを輸入した者の法定刑。それぞれ罰金の上限はいくらか。

解答

Aは10年以下の拘禁刑若しくは3,000万円以下の罰金(又は併科)である。覚醒剤は69条の11第1項1号の貨物であり109条1項の類型に当たる。Bは10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金(又は併科)である。児童ポルノは同項8号であり、109条2項(7〜10号類型)に落ちる。拘禁刑の長さは同じでも罰金の上限が3倍違う。

最低限おさえる型

禁制品輸出入=10年/3,000万(麻薬・けん銃・偽造通貨系)・1,000万(児ポ・知財・公安風俗系)、逋脱=10年/1,000万(10倍まで)、無許可・虚偽=5年/1,000万(価格5倍まで)。未遂・予備あり。両罰は「ほか」+没収・追徴。