第7部 通関業法の論点
論点7C 通関業の許可・許可基準・許可条件――「基準」と「条件」は別物
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で6問(6回)。主な根拠条文: 通関業法第3〜5条・第8条。
判断課題
許可の可否を決める「基準」(通関業法第5条)と、許可に付される「条件」(通関業法第3条第2項)のどちらの問題か。そして許可権者は誰か。
原則
通関業を営もうとする者は財務大臣の許可を受けなければならない(通関業法第3条第1項)。財務大臣は許可に条件を付すことができ(同条第2項)、その条件は法の目的を達成するために必要な最少限度のものでなければならない(同条第3項)。許可をしたときは遅滞なくその旨を公告するとともに、許可を受けた者に許可証を交付する(同条第4項)。弁護士(弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む)および弁理士(弁理士法人を含む)がそれぞれの法律の規定によりその職務・業務として行うものには第1項が適用されない(同条第5項)。許可の審査基準は第5条の3つである。
| 許可の基準(通関業法第5条)――許可の可否を決める | 許可の条件(通関業法第3条第2項)――許可に付す枠 |
|---|---|
| 一号 通関業の経営の基礎が確実であること | 付しうる条件は取扱貨物の種類の限定(貨物限定)と許可の期限に限られる(通関業法基本通達3-1) |
| 二号 人的構成に照らし通関業務を適正に遂行する能力を有し、かつ十分な社会的信用を有すること | 法の目的達成のため必要な最少限度でなければならない(第3項) |
| 三号 営業所につき第13条(通関士の設置)の要件を備えることとなっていること | 条件で貨物が一定種類に限られる営業所は通関士設置義務が免除される(通関業法第13条ただし書。論点7I) |
営業所の新設許可(通関業法第8条第1項)には、第3条第2項から第4項まで(条件・最少限度・公告と許可証交付)と、第5条第2号・第3号のみが準用される(通関業法第8条第2項)。第5条第1号(経営の基礎)は準用されない。
結論を分ける事実
- 問われているのが許可の可否(基準)か、許可後の業務範囲の枠(条件)か。
- 新規の通関業許可(通関業法第3条)か、既存業者の営業所新設許可(通関業法第8条)か。準用範囲が違う。
- 行為者が弁護士・弁理士等で、その職務・業務としての行為か。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 許可権者を税関長とする誤り。通関業の許可は財務大臣である(通関業法施行令第14条に権限委任規定はあるが、条文上の原則を問われたら財務大臣)。
- 弁護士・弁理士がその職務として行う業務にも許可が必要という思い込み。第3条第5項により第3条第1項の適用が除外されている。
- 営業所新設の許可(通関業法第8条)に第5条の基準がすべて準用されるという誤り。準用されるのは第2号(人的構成)と第3号(通関士設置)のみで、第1号(経営の基礎)は営業所単位では審査されない。
- 許可の条件として「期限」を付せないという誤り。取扱貨物の種類の限定のほか許可の期限も条件として付しうる(通関業法基本通達3-1)。
- 許可の公告・許可証の交付を任意とする誤り。第3条第4項は「遅滞なく」公告し、許可証を交付すると定める。
ミニドリル
A:新たに通関業を営もうとする甲の許可申請につき、資産・収支の状況から経営の基礎が確実でないと認められた。B:既に通関業者である乙が営業所を新設する許可申請につき、乙の経営の基礎が確実でないと認められた(人的構成・通関士設置には問題がない)。それぞれ許可されるか。
解答
Aは第5条第1号に適合しないため許可されない。Bは第8条第2項が準用するのは第5条第2号・第3号のみで、経営の基礎の確実性は営業所新設許可の審査基準でないから、これを理由に不許可とすることはできない。同じ「経営の基礎」でも、新規許可か営業所新設かで結論が割れる。
最低限おさえる型
許可=財務大臣、条件は必要最少限度、遅滞なく公告+許可証交付。基準3つ=経営基礎・人的構成(能力+十分な社会的信用)・通関士設置。営業所新設は2号3号のみ準用。