第6部 関税法等の制度論点
論点6M 輸入許可前引取り――関税額相当の担保と承認がセット
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で6問(6回)。主な根拠条文: 関税法第73条。
判断課題
許可前に貨物を引き取るための要件(担保・承認)と、承認後の貨物の法的地位、納期限・法定納期限等の日付を正確に答える。
原則
外国貨物(特例申告貨物を除く)を輸入申告の後、輸入の許可前に引き取ろうとする者は、関税額(過少申告加算税・重加算税に相当する額を除く)に相当する担保を提供して、税関長の承認(BP承認)を受けなければならない(関税法第73条第1項)。担保の提供は必須であり、税関長の裁量で免除されることはない。輸入の許可を与えることができない場合(関税未納すなわち第72条の場合を除く)には、税関長は承認をしてはならない(同条第2項)。
承認を受けた外国貨物は、課税物件の確定時期(関税法第4条)・適用法令(関税法第5条)・第72条等の一定の規定を除き、関税法の適用上内国貨物とみなされる(同条第3項)。納税の日付は次のとおりである。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 納期限 | 税額等の通知書面(関税法第7条の17)等が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日(関税法第9条第2項第3号) |
| 法定納期限等(更正・決定の期間制限、徴収権の消滅時効の起算) | BP承認の日(関税法第14条第7項第2号) |
| 蔵入貨物・保税作業製品で、輸入申告後・承認前に法令改正があった場合の適用法令 | 承認の日(関税法第5条第2号)。通常のBP貨物は原則どおり輸入申告の日(論点6C) |
結論を分ける事実
- 担保の額の基準――関税額相当か(課税価格相当ではない)。
- その貨物に輸入許可を与えられない事情(原産地虚偽表示等)があるか――あれば承認不可。
- 貨物が特例申告貨物か――特例申告貨物は納税申告前に引き取れる仕組みであり、BP承認の対象外。
- 問われている日付が納期限か、法定納期限等か、適用法令の日か。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 「課税価格に相当する担保を提供する」という誤り。担保は関税額(過少申告加算税・重加算税相当額を除く)に相当する額である。
- 「原産地虚偽表示があっても担保さえ積めば承認される」という誤り。輸入許可を与えることができない場合(関税法第72条の関税未納を除く)は承認できない(関税法第73条第2項)。逆に、関税が未納であることだけは承認の障害にならない――未納のまま引き取るための制度だからである。
- 「特例申告貨物もBP承認を受けて引き取る」という誤り。第73条第1項の括弧書きで明文除外されている。
- 「内国貨物とみなされるから、課税物件の確定時期や適用法令も内国貨物並みになる」という誤り。みなし規定から第4条・第5条は除外されている。ただし適用法令が承認の日になるのは、蔵入貨物・保税作業製品で申告後・承認前に法令改正があった場合に限られ(論点6C)、通常のBP貨物は原則どおり輸入申告の日の法令による。
ミニドリル
A:輸入者はBP承認を受けて貨物を引き取り、7月10日に第7条の17の税額通知書面が発せられた。B:同じ貨物をBP承認を受けずに通常どおり輸入申告し、7月10日に輸入が許可された。それぞれ関税はいつまでに納付するか。
解答
Aの納期限は、書面が発せられた日(7月10日)の翌日から起算して1月を経過する日、すなわち8月10日である(関税法第9条第2項第3号)。法定納期限等は承認の日である点と混同しない。Bは申告納税の原則どおり、当該貨物を輸入する日(輸入許可の日)までに納付しなければならない(関税法第9条第1項)。BPは「先に引き取り、通知から1月で納める」制度である。
最低限おさえる型
BP=関税額相当の担保+税関長の承認(担保必須・許可不能事由があれば承認不可)。承認後は内国貨物とみなす(関税法4条・5条等を除く)。納期限は税額通知の翌日から1月、法定納期限等は承認の日。BP承認だけでは適用法令の日は動かない。