第6部 関税法等の制度論点
論点6K 輸出通関――申告・検査・許可の一本道と、FOBという価格
第60回(令和8年)対応|法令・告示・通達の基準日:2026年7月1日
過去問実績: 第54〜59回で12問(6回)。主な根拠条文: 関税法第67条・第67条の2・第75条。
実務の処理順(第3科目)は論点5Eで扱う。
判断課題
輸出申告をどの税関長に、どの時点で、どの価格ですべきか。また、外国貨物を外国に送り出す「積戻し」に輸出の規定が及ぶかを判定する。
原則
貨物を輸出しようとする者は、品名・数量・価格その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない(関税法第67条)。申告先は貨物を入れる保税地域等の所在地を所轄する税関長であり(関税法第67条の2第1項)、外国貿易船に積み込んだ状態で申告することが必要な貨物は、税関長の承認を受けて係留場所所轄の税関長に申告できる(同条第2項)。輸出申告と輸入申告は同じ第67条に載るが、次の点で対照的である。
| 輸出申告 | 輸入申告 |
|---|---|
| 申告価格は本邦の輸出港における本船甲板渡し価格(FOB。施行令第59条の2第2項) | 申告価格は課税標準となるべき価格(CIFベースの課税価格) |
| 保税地域等に入れた後でなければならないという制限はない(搬入前申告可) | 保税地域等に入れた後が原則(関税法第67条の2第3項。例外3類型は論点6L) |
| 特定輸出申告等(関税法第67条の3)により保税地域等に入れずに許可まで受けられる(論点6T) | 特例輸入者等の申告特例(関税法第67条の2第3項第3号) |
積戻し(本邦から外国に向けて行う外国貨物の送出)には、第67条、第67条の2第1項・第2項、第68条〜第69条の10、第70条等が準用される(関税法第75条)。ただし仮に陸揚げされた貨物は積戻し規定の対象から除かれる(外為法第48条第1項の輸出許可を要するものは除外されず、積戻し手続による)。
結論を分ける事実
- 申告価格の建値――輸出はFOB、輸入は課税価格。
- 貨物が保税地域等に入っているか――輸出申告の有効性には影響しない。
- その貨物は「輸出」か「積戻し」か、積戻しなら仮陸揚げ貨物か。
典型的なひっかけ――誤った考え方
- 「輸出申告価格も課税価格(CIF)による」という誤り。輸出はFOB(無償輸出は有償とした場合のFOB)。
- 「輸出申告も貨物を保税地域に入れた後でなければできない」という誤り。搬入後要件は輸入申告のみに課されている。
- 積戻しは関税法上の「輸出」ではないのに、「輸出でないから第67条の手続は不要」とする誤り。第75条が輸出通関の規定を準用する。
- 仮に陸揚げされた貨物を一律に積戻し手続の対象とする誤り。原則対象外で、外為法の輸出許可対象だけが手続に乗る。
ミニドリル
A:輸出者は、CIF建て契約価格650万円(うち海上運賃・保険料50万円)の貨物を、保税地域に搬入する前に輸出申告した。B:輸入者は、税関長の承認も特例輸入者の資格もないまま、貨物を保税地域等に入れる前に輸入申告した。それぞれの申告は適法か、価格はいくらで申告するか。
解答
Aの申告は適法である。輸出申告に搬入後要件はなく(関税法第67条の2第3項は輸入申告のみを対象とする)、申告価格は本邦輸出港のFOB価格600万円である(施行令第59条の2第2項)。Bの申告は不適法である。輸入申告は貨物を保税地域等に入れた後にするのが原則であり(関税法第67条の2第3項)、例外(本船扱い等の承認・搬入前申告の承認・特例輸入者等)のいずれにも当たらない。
最低限おさえる型
輸出=申告→検査→許可。申告価格はFOB。搬入後要件は輸入だけ。積戻しは第75条の準用(仮陸揚げ貨物は原則対象外)。